5月11日(日)「枚方宿 古今東西音絵巻~宿場町と鍵屋で音と歴史を楽しもう~」が開催されました。
江戸時代の様式を残す歴史的建造物である市立枚方宿鍵屋資料館での「古今東西」をテーマとした伝統芸能やクラシックなどによる公演をはじめ、地域の民話の朗読会や枚方宿の魅力を伝える動画上映など、盛りだくさんのプログラムが行われました。
また、当日は市立枚方宿鍵屋資料館の学芸員によるギャラリートークや、「枚方宿くらわんか五六市」が同日開催され、大いに賑わいを見せました。


プログラムの一つである「枚方宿 古今東西音絵巻/古今東西が交わる瞬間~音の旅~」の舞台は、市立枚方宿鍵屋資料館にある国指定有形文化財の鍵屋別棟。貴重な折り上げ格天井を備えた2階の大広間は、シャンデリアがきらめき、当時の賑わいを今に伝えています。
まず、日本の伝統的な音と西洋の音を見比べ、聴き比べていただきたいとのイベントの説明に続き、ナビゲーターを務める祇園(木﨑太氏、櫻井健一朗氏)と鍵屋資料館の橋本館長が登場。館長からは、枚方宿の歴史や鍵屋資料館について、NHK総合テレビ「ブラタモリ」で紹介されたことにも触れながら紹介があると、祇園は「あのブラタモリで?!」と非常に驚いておりました。
第一部「鍵屋に響く東西の調べ」は、日本の伝統音楽である雅楽と、西洋クラシック音楽の弦楽四重奏です。

前半は、「和風空間」(篳篥(ひちりき)・田中誠氏、笙(しょう)・芳村由記氏、竜笛(りゅうてき)・芳村直也氏)による、日本古来の音楽である「雅楽」の演奏です。1000年以上の歴史がある「雅楽」についてや、楽器の解説を交えながら楽曲を演奏。平安時代にタイプスリップしたような、時空を超えた特別なひとときを堪能しました。

後半は、ヴァイオリン・堀江恵太氏(関西フィルハーモニー管弦楽団アソシエイトコンサートマスター)と佐藤一紀氏、ヴィオラ・四家絵捺氏、チェロ・水野奈美氏の4名による、「弦楽四重奏」です。
鍵屋主屋の建てられた江戸時代後期と同時期にドイツで活躍したベートーヴェンの曲の中から、明るく優雅な曲調の『弦楽四重奏曲第2番』を選曲。なかなか聴く機会のないクラシックの生演奏を、和の空間でたっぷり楽しみました。
第二部の「鍵屋に響く古今の調べ」では、日本の伝統芸能である能楽と、ソプラノ歌手による音楽のステージが行われました。


前半は、能楽師 シテ方・梅若基徳氏、シテ方・梅若雄一郎氏、笛方・森田保美氏、小鼓方・成田奏氏による、日本の誇る伝統芸能「能楽」です。
囃子として演奏される小鼓と笛について解説後、『敦盛』を披露。神秘的で幽玄な世界が大広間に広がり、時が止まるほどの迫力です。感動ひとしおで会場から大きな拍手が送られました。

後半は、ソプラノ歌手・野々村彩乃氏による歌のステージです。江戸時代と同時代の音楽から、現代の曲までを時代を追って歌っていただきました。
江⼾時代後期にヨーロッパでシューベルトが作曲した『アヴェ・マリア』(1825年)やプッチーニ作曲『私のお父さん』(1918年)。日本の童謡『赤とんぼ』(1927年)、名曲『上を向いて歩こう』(1961年)、昭和の青春ソング『なごり雪』(1974年)。そして現代の曲からは、井上陽水さんの『少年時代』(1990年)、米津玄師さんの『地球儀』(2023年)が登場。全7曲をオペラバーションで華やかに歌い上げていただきました。
来場者は、なかなか聞き比べることがない古今東西の音を、時空を超えた音の旅を楽しむかのように堪能しました。
枚方公園青少年センター ホールでは「絵本の世界へようこそ!~弦楽四重奏とともに~」が開催されました。

「新作絵本 朗読会」では、枚方市に伝わる民話「孝子鈴見と別子山」を元にした新作絵本「鈴見が松と別子山~鶴になったおくりもの~」の朗読を、地元枚方の小学生がワークショップなどで練習を重ね、本番に臨みました。
一人の若者が鶴を助け、その後現れた美しい女性が妻になって・・という地元の民話を題材にした家族の絆の物語を、大阪こども専門学校学生のサポートのもと、緊張しながらも一生懸命大きな声で物語を伝えようとする姿に、客席では涙を拭う方もいらっしゃいました。(新作絵本は、枚方市内の小学校や図書館等に配布予定です)

続いて、「弦楽四重奏 ミニコンサート」です。ヴァイオリン・堀江恵太氏と佐藤一紀氏、ヴィオラ・四家絵捺氏、チェロ・水野奈美氏が、絵本をテーマとした新曲「別れの風」(作曲:高木日向子)や、ジブリ作品の楽曲など全6曲を演奏。観客のみなさんはその美しい音色にうっとりと聞き入りました。

また、当日は、市立枚方宿鍵屋資料館の主屋と枚方ビオルネ1階のデジタルサイネージで、イベントにあわせて制作された動画『枚方宿物語』が放映されました。かつて料亭・料理旅館として親しまれた「鍵屋」や枚方宿の歴史、五六市などの魅力を紹介する動画で、多くの人々が足を止めて見入っていました。
(動画:「youtube大阪文化資源魅力向上事業」チャンネル)
訪れた人々は、今も賑わいを見せる宿場町枚方宿の歴史・文化に触れながら文化芸術を満喫し、春の休日を楽しみました。