8月16日(土)、和泉市久保惣記念美術館にて「和泉きつね演劇祭~久保惣記念美術館で文楽とオペラを楽しもう~」が開催されました。このイベントは、大阪府・大阪文化芸術事業実行委員会主催による「大阪文化資源魅力向上事業」の一環として実施。府内各地にある文化資源のさらなる魅力向上を図り、地域の魅力を広く発信することを目的としています。
この日は、和泉市の北部、信太地域に伝わる“葛の葉伝説”に登場する「狐」をテーマに、人形浄瑠璃文楽「芦屋道満大内鑑」とオペラ「おこんじょうるり」を上演。和泉市の広報番組「IZUMI×ラニー」(J:COMチャンネル)のMCを務めていたラニーノーズ(洲崎貴郁、山田健人)も登場し、盛り上げました。さらに浮世絵の特別展示やワークショップも同時開催されました。

会場となった和泉市久保惣記念美術館は、大阪・泉州で織物業を営んできた久保惣株式会社の寄贈により、1982年に開館した市立美術館です。国宝や重要文化財を含む東洋古美術を中心に約1万点以上を収蔵し、西洋絵画も展示。茶室や庭園、音楽ホールも備え、芸術と自然が調和した和泉市の文化拠点となっています。
施設内にある和泉市久保惣市民ホールでは、人形浄瑠璃文楽とオペラの上演前にラニーノーズが登場。ランダムに選んだ観客の方に即興ソングをプレゼントし、会場を沸かせました。和泉市で印象に残っている場所については、陸上自衛隊信太山駐屯地で、真夏にレンジャー訓練をしたことがあるというふたり。山田は「過酷すぎて、和泉市がキライになりそうやったけど…」とこぼしながらも「貴重な体験ができました」と振り返りました。

イベントタイトルにもなっている“きつね”は和泉市と関係が深く、和泉市北東部の信太の森にのこる“葛の葉伝説”とは、森に住む白狐が平安時代に活躍した安倍晴明の母親であるという伝説です。今回は、この伝説を題材にした人形浄瑠璃文楽ときつねをテーマにしたオペラが見られるということで、「人形浄瑠璃文楽もオペラも生で見たことがないのでめちゃくちゃ楽しみです」とラニーノーズのふたりも期待を寄せました。
まずは開演前に、日本の伝統芸能の一つである「人形浄瑠璃文楽」の解説から。初めて観る人にもわかりやすい構成となっています。人形浄瑠璃文楽の歴史についての詳しい解説に続き、語り・三味線・人形遣いのそれぞれの解説と実演もありました。三味線の解説では、同じ弦楽器であるギターを使うラニーノーズも興味津々。人形浄瑠璃文楽は、「主遣い」「左遣い」「足遣い」の3人で約3kgある一体の人形を操るのが特徴ですが、息の合わせ方や心情の表現方法など興味深い解説と実演に目が釘付けとなりました。

公演では、「芦屋道満大内鑑」の一節で葛の葉が眠る幼い子を前に、涙ながらに夫やわが子との別れのつらさ、母としての慕情が迫力たっぷりに披露されました。観客と一緒に楽しんだラニーノーズは、「人が人形を動かしているので、動きがすごくリアル!」(洲崎)「間近で見ることができて、すごい迫力でした!人形と目があったような気分になりました。表現力がすばらしかったです」(山田)と感心しきり。語り手の豊竹若太夫氏は、「本番中はくしゃみもできないし大変です」と明かし、「会場のようすを良く見ながら、お客さんと一緒に盛り上げています」と本番中に意識していることなど、貴重な話を聞くことができました。

続いて、音楽と演劇が融合した舞台芸術、オペラの上演です。物語がすべて歌で表現されるオペラは、音楽・歌唱・演技が一体となって観客に感動を与える総合芸術。関西を中心に活動する声楽家団体「関西二期会」によるオペラ「おこんじょうるり」は、リズミカルなピアノの伴奏とともに、客席も舞台に使った迫力ある演目で、観る人を笑顔に。孤独なばばさまとキツネのおこんに通う心の絆が笑いあり、涙ありで表現されました。
舞台を鑑賞したラニーノーズのふたりは、「演者さんの声量がすごくてマイクをつけているのかと思うくらい。迫力ある歌声に惹きつけられました」(洲崎)「日本の物語と西洋のオペラの組み合わせがおもしろかったです。普通に喋るより、感情が伝わりますね」(山田)と、初めてオペラを観た感想を語りました。


また、“きつね”をテーマにした人形浄瑠璃文楽と日本物オペラという2つの演目を間近で楽しんだ観客からは、大きな拍手が送られました。
隣接する和泉市久保惣市民ギャラリーでは、樹脂版による浮世絵の摺りを体験できる「浮世絵ワークショップ」も行われました。絵柄は、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 凱風快晴」と歌川国芳「猫の当て字 うなぎ」の2種。まずは、樹脂版の上にインクを塗り、目印に合わせて紙を置いたら、馬連(バレン)でまんべんなく転写していきます。それぞれ4色を順番に重ねていくと見事な絵柄が浮かびあがりました。スタッフのサポートで、子どもから大人まで多くの方が、気軽に浮世絵の魅力を体感することができました。



さらに、新館展示室では、「‘25 UKIYOE EXPO in IZUMI」と題し、常設展「ようこそオーサカ、ようこそニッポン-なにわ名所と物産図会-」を8月17日(日)まで開催中。大坂の名所を大胆な構図で描く「浪花百景」など大阪・関西万博開催地である大阪にちなんだ作品が展示され、多くの方が鑑賞していました。
芸術と自然が調和する久保惣記念美術館で、人形浄瑠璃、オペラ、浮世絵を楽しめる心に残る一日となりました。
