まずは男性MCによるイベントについての説明のあと、シェフたちのコメントなどのVTRが流され、ルレ・エ・シャトー副会長のオリヴィエ・ローランジェ氏の挨拶が行われました。オリヴィエ氏は、ルレ・エ・シャトーの概要について説明したあと、料理について、食べることの喜びについて、海についての話をしたい、と話し始めます。そこから料理人だけではなく漁師、農家の権利、そして自然を尊重し、ともに料理を作り上げるということや、現在世界の海が抱えている汚染、温暖化、乱獲などの問題についても言及。そして野菜や肉に意識的になっている料理人は多いが、魚に関してはけしてそうではないと嘆き、サスティナブルな漁業のために料理人ができることがあると断言。各魚種にどれだけのストックが残されているのかを知り、魚の旬を守る、産卵期やサイズの小さな魚は獲らないことなどを提案したほか、例として鯵の使い方が日本とフランスで全く違うこと、これまでルレ・エ・シャトーの取り組みで改善したことなどについても話しました。さらに若い世代についての期待や希望に続けて、海に囲まれた日本の文化、自身が実際に訪れ、感じた日本の印象などについても説明。日本がイニシアチブを取り、本来の意味での先進国になることが可能である、子どもたちの世代に伝えていける国になると確信していると話し、それは料理人、仲買人、消費者の行動が伴って始めて可能になる、力を合わせて世界に手本を示してもらえると思っていると力を込めました。
続いてシーフードレガシーCEOの花岡和佳男氏が登壇、花岡氏は漁業資源に関する日本をとりまく現状について、今何が起きているか、これからどうすればいいのかについて話します。まず世界の状態のあと日本について「めちゃくちゃ状態が悪い」と断言。スクリーンに資料を映しながら説明していきます。花岡氏は特に大型の魚が枯渇しつつあること、日本の漁獲量が右肩下がりであること、日本で食べている魚の7割は輸入で賄われていることなどについて言及。このような状況をなんとかしたいと、シーフードレガシーという会社を立ち上げたと説明します。「シーフードを生態系、経済、社会のつながりを象徴するものと捉えている」と花岡氏。世界には海のエコラベルがあることなどに触れ、アメリカやヨーロッパではサスティナブルをクールにうたうレストランがたくさんあると説明。その動きが日本でも始まっている、企業やホテルでの導入がスタートするなど、サスティナブルシーフードが少しずつ浸透していっていることを報告し、いい活動をみんなで支えていくことが大切と話しました。
次に『世界の食のサスティナブル(SDGs)パネルディスカッション』がスタート。登壇者は、オリヴィエ氏、花岡氏、そしてルレ・エ・シャトー日本&韓国副支部長兼世界食協議会員 神戸北野ホテル総支配人・総料理長の山口浩氏です。 山口氏はサステナビリティについて、後回しにしてきた現状があると述べ、世界の基準と日本の現状がかけ離れすぎているので、どうすれば近づけていけるのかを考え、行動基準を作ったことを報告。花岡氏も欧米から比べると10年、15年と遅れているものの、日本でも始まっていること、そしてかなりの勢いで進んでいるとアピール。ルレ・エ・シャトーのように大きなネットワークでやることに意味があると話しました。
山口氏はマニフェストの内容についても説明。オリヴィエ氏も訪れた明石などで、漁協が本来の責任を果たしていると感じたことを含め、自身が足を運んだ日本各地の印象などについて感想を述べました。山口氏は、現場の漁師にサステナビリティの本来の意味が伝わりにくいと感じたと話し、自分たちの力になることだということをわかってもらえる状況を作っていくべきと説明。そして日本の海を守るということを意欲的に行うというのがルレ・エ・シャトーの考え方だと話しました。最後にオリヴィエ氏は、若い世代、そして他の料理人のことを考えたとき、ここにいることをうれしく思うと話し、ルレ・エ・シャトーだけで何かができるとは思わない、でもそこにいる料理人が声を上げることで、小さいけれど一石を投じることになるのではと話しました。
山口氏は、関西でサステナビリティに興味を持つたくさんの人が今回のイベントに参加したことにお礼を述べ、日本での活動は世界的にも注目されていると説明。ルレ・エ・シャトー会長のフィリップ・ゴンベール氏をステージに呼びます。ゴンベール氏は、日本支部が始めて大きなチャレンジをしたこと、実現するまでには懐疑的になったこともあったと振り返り、ここに至ったことに感銘を受けていると笑顔。サステナビリティについて、日本支部の料理人、そしてジャーナリストのみなさんとこの場を分かち合えたことを光栄に思うと話しました。
ここからオリヴィエ氏が来場しているシェフたちの名前を読み上げると、ルレ・エ・シャトーのシェフたちがステージ上に集合、記念撮影を行いました。
質疑応答でオリヴィエ氏は、自分たちの世代ができるのは、次世代に対して知識を伝えることと明言。以前と違い、何をすればいいか、何をしてはいけないかがはっきりとわかっている、その情報を伝えていくのも大きな役割と思っていると話しました。
休憩に続いて、世界のシェフによる大阪の食材を用いたデモンストレーションです。まずは山口氏は世界の5カ国からシェフを招聘したことや、夜のガラディナーが開催されることについて説明。そして自身はサステナビリティと大阪もんのつなぎ役と話し、今回使う食材が帆立貝貝柱と明かしました。そこから手順を詳細に説明しつつ、調理を進めていきます。会場はステージセンターの大型スクリーン以外に、左右にもモニターを設置。シェフたちの手元がわかりやすく映し出されていました。
山口氏のメニューは“北海道産MSC認証帆立貝貝柱のオーブン焼き 小野菜と酸味の利いた白ワインソース”。山口氏は料理を作っている間に、調理法以外にも日本と海外の料理、食材の違いなどについても説明します。そして料理については「ワインの風味、旨味が凝縮されているソース、貝柱の甘みを楽しんでいただけたら」とアピール。会場の参加者たちもその味に舌鼓を打ちました。
続いてのアルノー・ファイ氏は“和歌山県那智勝浦町FIPビンチョウマグロのグリエ、松茸ポワレ、黒カルダモン風味のしいたけのエキス”です。ファイ氏はまず今回招かれたことについて感謝。昨日、南大阪のなにわ黒牛や堺の鋏鍛冶などを訪問したことを明かします。そして会場に向かい、環境について様々な問題があることに触れ、「一人ずつが小さなことでいいので考えて、環境を守っていっていただければ」と話しました。
山口氏は那智勝浦町のビンチョウマグロについて説明。MSCの認証は取れていないが、漁業改善計画の一環として使っているもので、日本のなかではサステナビリティのことを考えた素材であると話します。ファイ氏が進めていく調理のポイントや食材について、フォローや解説を行いました。きのこ類をよく使うというファイ氏は松茸を“日本のトリュフ”と呼んでいることも告白。ほかにも今回の食材であるマグロは、資源保護の観点からこれまでに使用したことがなかったことも明かしました。
ヴィッキー・ラウ氏は“泉州だこのタルトレット”です。山口氏はラウ氏が元々デザイナーだったと紹介。ラウ氏はデザイナーをしていて自分の手で何か作りたいと思い、料理の道へ進んだとのこと。自身の経歴や店舗、料理などについても説明し、「私の料理はアートであり、作ること、それが信念」と語りました。そして香港と日本の違いなどについても言及。そのあとには海の環境問題について取り組めることは光栄と話し、料理人からお客様へ問題を伝授していくことも使命と思っていると力を込めました。
タコについては中国ではあまり食べないと明かしますが、自身はよく食べるとのこと。なかでもタコのお寿司が好きと話しました。調理方法についても詳細に解説。24種のハーブを使ったソースや香港から持ってきたというタルトを使うことなど、説明を行いながら調理を進めました。
ラストのデモンストレーションは、カイル・コノートン氏。“大阪産(もん)しま鯵のグリーンティーと紫蘇塩風ヤング大根とバチェローズバトン”です。コノートン氏は北海道で勤務していた経験があるとのことで、少しだけ日本語も披露。そして自身で賀茂なすや蕪などを作っていること、魚は日本の豊洲からも仕入れていることなども明かしました。
料理は紫蘇や梅、昆布のパウダーや日本茶などを使用します。マリネしたしま鯵を食感にもこだわった付け合せの大根と盛り付け、最後に紫蘇のパウダーを振り、完成。すべてのメニューは参加者たちに振る舞われ、デモンストレーションは終了しました。
「食の都・大阪」魅力再発見イベントのレポートは下記からもご覧頂けます。