レポート

大槻能楽堂で能と音楽をいっしょに楽しめるスペシャルな「秋の謡会2022」を開催

開催日程:

2022年11月5日(土) 、6日(日)

会場:

大槻能楽堂

11月5日(土)、6日(日)の2日間、大阪市の大槻能楽堂で「大阪文化芸術創出事業 秋の謡会2022」が開催されました。人間国宝が演じた能のほか、大阪出身アーティストも登場して演奏を聴かせるなど、「うたう」というテーマで伝統芸能と現代の音楽を一度に楽しめるスペシャルイベントになりました。

初日の能楽プログラムは人間国宝で能楽師の大槻文藏さんらによる能、そして音楽プログラムには矢井田瞳さん、TRICERATOPSのボーカル・ギターを務める和田唱さんが登場しました。

MCのFM802のDJ、深町絵里さんが舞台へ。イベントについて話したあと、能についても説明を行います。重要無形文化財の認定を受けた大槻文藏さん、大槻裕一さんが能を舞うこと、そして、今日の演目の見どころが、絢爛豪華な舞であることなどを伝えました。まずは能楽プログラム「石橋 大獅子」から、笛、鼓の音が響くと、能楽堂の空気が一変します。石橋とは中国の清涼山にかかっている橋のこと。その先は文殊菩薩の浄土であるものの、かなりの修行を積んだ僧でなくては渡ることが難しい橋です。中国・インドの巡礼を続けていた寂昭法師がその石橋を渡ろうとしたところ、どこからか現れた子どもに引き止められます。そして法師が橋のたもとにとどまっていると、向こうから音楽が聞こえてきて……というのが前半。後半部分は、まず寂昭法師が巡礼を行うに至ったことを述べる場面から。続いて囃子方が緊張感を高めると、最初に赤獅子が、続いて白獅子が紅白の牡丹の花が立てられた舞台へ姿を現します。躍動感あふれる獅子の舞は、迫力があり、凛とした美しさが感じられるもの。観客もその世界観に引き込まれていました。

続いては、大槻裕一さんとのスペシャルトークセッションです。まずMCの深町さんが大槻さんの人となりを紹介。大槻さんからは能楽の歴史について、室町時代から行われており、世界で最も古い演劇と言われていることなどが語られます。そしてメインの舞台に続く橋掛かりが、あの世とこの世を結ぶ橋と言われていることや舞台上には白い足袋でしか上がってはいけないことなど能や能舞台にまつわることを解説。能の楽しみ方については、難しい演目もあるが、わかりやすく派手で楽しい演目もたくさんあると話すと、少しだけ下調べをして、あらすじ、見どころがわかっていると全然楽しめ方が違うと語りました。ほかに「石橋」を演じていて一番きつい体の部位など、会場からの質問にも回答するなどレアなトークをたっぷり聞かせたあと、最後にはお囃子、掛け声、能面、衣装など、各々の楽しみ方を見つけてもらって、会場に足を運んでもらえたらとメッセージを送りました。

続いては音楽のステージ。まずは和田唱さんが登場です。会場に礼をしてから『ココロ』、そしてアップテンポな『Fly Away』へと続けます。MCでは先ほどの「石橋」に触れ、生で能を見たのは初めてと話すと「すごかったですね!」と会場に呼びかけ。バックステージで大槻文藏さんとすれ違った感想を「シュッとしてて、カッコよかった」と明かしました。そしてジャズのスタンダード・ナンバー『Misty』をギター一本で聴かせると、TRICERATOPSの『シラフの月』へ。最後は鍵盤の前に座り、ソロアルバムから『Home』を演奏し、ライブは終了しました。

続いての矢井田瞳さんはアコースティックギター、鍵盤の二人編成のステージ。一曲目の『Ring my bell』を歌い終えると、こんな荘厳な場所でライブさせてもらえる、めちゃくちゃ楽しみにしてました、と笑顔。続く二曲目の『さらりさら』を歌い終わると「ノンマイクでやってみたい」と能の掛け声を披露。そして、このステージの写真を見たとき、この曲をやりたいと降りてきた曲、と話して『キャンドル』へ。続く大ヒット曲『My Sweet Darlin’ 』では、会場も手拍子でレスポンス。ラストの『駒沢公園』を歌い終えると、改めて和田さんを呼び込み、「一緒にやるのは初めて」と2人で『ケセラセラ』を聴かせました。

2日目の能楽プログラムには、能楽師の大槻裕一さんが登場。音楽プログラムでは、フジファブリックのギター・ボーカルの山内総一郎さん、そして竹原ピストルさんがその歌声をきかせました。

まずMCを務めるFM802のDJ・大抜卓人さんから、このイベントが「はじまりの音楽と今の音楽を楽しむ」というものであること、さらに能の歴史なども説明。能楽プログラムの演目は「安達原 黒頭」。山伏祐慶の一行は修行の旅の途中、安達原で夕暮れを迎え、そこで見つけた宿を借りることになります。しかし、宿の主である女との「閨(ねや)を見るな」という約束を、同行していた山伏が破ってしまい、一行は恐ろしい目にあうことに。本性を表した女の正体は……というお話。 どこか寂しげな笛の音、そして鼓、掛け声が響くと、静かに物語がスタートします。中央に置かれた竹でできた萩屋を舞台に、前半は比較的静かなやり取りで進行。そこから女との約束を破ろうとする僧の様子に会場から笑いが起きるひと幕も。見てはいけないと言われれば見たくなる、つい約束を破ってしまう人間の姿を見せた後、話は急展開。囃子が徐々に緊張感を高めると、クライマックスへとなだれ込みます。約束を破られ、秘密を知られ、怒り、哀しむ女と山伏祐慶たちとの息の詰まるやりとりが、舞台全体を使って演じられました。

演目のあとには人間国宝である大槻文藏さんとMC大抜さんのトークセッションも行われ、能について、そして会場からの質問にも答えました。大槻さんは先程の舞台を後見として後ろから見ていたことを明かすと、後見とは演技上の手助け、舞台転換に必要なものの手伝いなどをする、と話します。舞台の前にリハーサルをしないこともたくさんあると話すと、能は役者たち、笛や鼓の人たちもすべてが専業制、と能の仕組みを解説。だから自分のやっていることをきっちりやらない限りは合わない、自分のパートをしっかりしていればきっちり組み上がると話します。しかし、それだけでは平面ができただけ、そこを立体にしていかないといけないとも。感動を伝えるにはそこからどれだけプラスαがあるか、と力を込めました。そして世阿弥の能楽論にも触れ、最初に師匠から教わり、習ったままでやっている間は「無主風(むしゅふう)」、それから自分が舞い込んで、何度もやっているうちに自分のものになり、「有主風(うしゅふう)」という、そこに主が出てくると話しました。その域に行くまでにどのくらいかかるかという会場からの質問には「精進の仕方によります」とさらり。さらに自身が稽古し、練り、積み上げることで、舞台上で火花が散る、そこで瞬発力が発揮されて膨らみ、膨張していく、それが良い舞台であると話しました。

続いては、山内総一郎さんのライブ。リラックスした様子で会場へ挨拶すると、身体が自然に動き出すようなリズムの『Feverman』からスタートします。歌い終わると「能の舞台で能の後に歌うのは初めて、見ていたけど感激しました」と話し、父親が小さいころこの舞台に立っていた写真が送られてきた、魂のこもったライブにしたい、と二曲目の『手紙』へ。そしてこの後ステージに立つ竹原ピストルさんとの出会いについて話したあと、一方的にファンだったと明かすと、同じステージに立てるなんて幸せと笑顔を見せ、竹原さんの『おーい!おーい!!』のカバーを披露。そこから『白』、そしてラストは『東京』で締めくくりました。

ラストは竹原ピストルさんのライブです。「今日は貴重な機会をありがとうございます」と話すと、先ほど山内さんがカバーした『おーい!おーい!!』からスタート。2曲目はヒリヒリしたテンションの『ギラギラなやつをまだ持ってる』、そして『初詣』へと続けます。4曲目の『みんな、やってるか〜!』では会場から手拍子も。吉田拓郎の『落陽』をカバーした後は、ブルースハープとギターで『朧月、君よ今宵も生き延びろ』へ。そこから「唯一のスマッシュヒットソングやります」と話して『よー、そこの若いの』を聴かせます。今日の能については、率直に物語が恐ろしかったことに加え、舞台、演者から滲み出てくる空気感に畏れ、不安、興奮を味わったと告白。そして、ほかの能も見てみたいと思ったと話すと、「今日は貴重な機会をありがとうございました」と告げ、愛する存在へ書いたポエムをのせたと『Amazing grace』を披露。最後までパワー溢れるライブを見せてくれました。

二日間にわたって行われた「秋の謡会2022」。人間国宝の大槻文藏さん、そして大槻裕一さんの素晴らしい舞はもちろん、囃子方の奏でる音は圧倒的な迫力がありました。そして能楽堂で現代音楽を聴くという貴重な機会にも恵まれた今回。演奏したミュージシャンたちが口々に、音の響きがいいことについて言及しました。歴史ある能と現代音楽、それぞれにスタイルは違うものの、その魅力をたっぷりと感じられるイベントとなりました。

  • イベント名
    大阪文化芸術創出事業『秋の謡会2022』
  • 開催日

    2022年11月5日(土) 、6日(日)

  • 会場

    大槻能楽堂

感染拡大防止対策

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・発熱等の症状がある方は、ご入場をお断りする場合がありますので、あらかじめご承知ください。
・各プログラムの定員に達した際は、入場を制限させていただく場合があります。
・一部のプログラムでは、氏名、連絡先等の個人情報をお伺いする場合があります。
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その他

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・天候により、一部プログラムの中止・変更をする場合がありますので、あらかじめご承知ください。

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