2月9日(金)のなんばグランド花月をかわきりに、4日間行われたのが、大阪国際文化芸術プロジェクト「第四回 大阪落語祭」です。次代を担う上方落語家を中心に、東西の金看板も加え、珠玉の話芸が披露されるこのイベント。10日(土)から12日(月・振休)の間には、国立文楽劇場を始め、万博記念公園やたかいし市民文化会館、摂津市民文化ホールといった会場で「立春大吉寄席」が開催されました。
初日となった9日(金)の「なんばグランド花月公演」では、まず笑福亭鉄瓶 、笑福亭松喬、桂文珍の順で舞台へ。鉄瓶は「違う事務所やから本来はここに出られない」と話すと、「このあとはスターしか出ません」と自虐で笑わせます。そこから東西演芸ファンの違いで盛り上げ、「うどんの出てくる話を聞いていただこうと思います」と「時うどん」です。定番のネタですが、そのよく通る声とテンポのよさで会場を噺の世界にグッと引き込み笑わせました。
松喬も「NGKは初めて、アウェー感満載」と話すと、「花色木綿」へ。空き巣に入った先での盗人、住人、それぞれの様子を面白おかしく伝えていく様子は、“泥棒松喬”の名に偽り無し。時事ネタ、モノマネなども挟み、会場を大いに盛り上げました。
文珍は、ゆったりと姿を見せると会場に一礼。大きな拍手に包まれると、松喬のネタに被せ、早速ひと笑い。芸歴55年と明かして、再び会場から拍手が起こりますが「金がかからん拍手……」と愚痴って笑わせます。それからも、ゆったりとしたテンポで十分間をとりながら、会場の空気を自分のものにしていきます。最新のテクノロジーなどを話題に、大いに笑わせたあと落語のこれからをテーマにした「落語記念日」へ。歌声を披露するシーンでは会場から手拍子も起きたほか、次々と飛び出すネタで爆笑が連続する様子は圧巻でした。
口上では桂福團治、桂文枝、月亭八方、桂文珍、桂南光、笑福亭仁智、桂米團治が舞台に。司会は月亭八光が務めます。八光から大阪落語祭が4回目を迎えることが伝えられると、会場からは拍手が。続けて八光は「前期高齢者が3名、後期高齢者が4名」と笑わせます。そして自ら、重鎮・月亭八方師匠のご子息様と自己紹介したあと、「時間もあるので短めに」と面々に釘を刺します。そして「本物のご子息」と桂米團治を紹介。米團治は「天然の米團治です」と先ほどの文珍の噺を引き合いに笑わせると、65歳になって髪の毛だけは親父に似て参りましたと明かし、今後もこの落語祭が華やかに繰り広げられますようお願い申し上げる次第でございます、と挨拶しました。
上方落語協会会長の笑福亭仁智は「会長になって5年、ろくなことがございません」と泣き言から。就任後すぐから、地震、楽屋浸水、台風に合い、そこからコロナ、それがやっと終わるかと思ったら、会長の任期も終わる、とオチをつけて笑わせます。気を取り直して、「大阪落語祭を4年続けていただいてありがたい限り、感謝しかございません」と話すと、何よりもお客さんの声援が頼り、今後とも上方落語をよろしくお願い申し上げますと頭を下げました。
続いて米朝事務所常務取締役と紹介されたのが南光。3年くらい息子が社長をやって会社が傾いたと米團治をイジって笑わせます。そして自身は落語協会に入ってないのに呼んでいただいてありがたいと感謝を伝えますが、「口上は襲名とかでやるもの、今日は何もないでしょ?」と素朴な疑問をぶつけて笑わせました。
上方落語協会顧問と紹介された文珍は「いつの間にか顧問、知らなかった」とひとボケすると、仁智会長に次期もがんばってほしいとエールを送ります。そして先ほどの噺が「落語記念日」だったことを明かすと、ぜひとも落語を好きになって楽しんでいただいたらありがたい、と伝えました。
八方は「お父さんでーす」と紹介されると「穴があったら入りたいわ」。そしてまずはありがとうございますと会場に感謝を述べると、明日の夜7時から万博記念公園で落語祭に出演することを明かし、「この寒いのに誰か来ます?」と訴え、笑わせました。
文枝は、去年の7月に満80歳を迎えたことに触れ、「まさか(80歳に)なるとは思わなかった」と話すと、「もっと若く元気のある、溌剌とした面白い人が上方落語会にはたくさんいる、そういう若い人をぜひ応援してほしい」とアピールしまいた。
福團治は、半世紀以上この世界にいることを話すと「疲れた」とこぼし、笑わせます。そして入門当時19名だった上方落語が、諸先輩方の力によって今は300人に到達するまでに育った、とこれまでを振り返ると会場から拍手が。そして改めて偉大な先人たちに感謝すると、「これからは諸先輩方にあの世から『がんばってるな』と笑っていただけるように、一生懸命がんばりたい、皆様のご協力のほどよろしくお願い申し上げます」と締め括りました。そして最後は大阪締めを行い、口上は幕を下ろしました。
口上のあとにはまず南光が舞台へ。襲名して30年と明かすと会場からは驚きの声が。そして以前の桂べかこという名前については「今やから言いますけど嫌でした、でもざこばよりマシか、と」と話し、会場は爆笑。そこから襲名時などを含めた健康にまつわるレアなエピソードが万歳の「南光闘病日記」で笑わせます。点滴やダイエットなどに関する細かなディテールをスピード感たっぷりの語りで聞かせていく姿はさすがの一言。会場も大いに盛り上がりました。
トリの文枝は「なんばグランド花月に12時間いる」と話すと、弟子が連れてきた子どもとの宿題についてのやりとりで爆笑をさらいます。そして、その宿題をお題にした創作落語「宿題」へ。登場する父親と子どもの脱力系やりとりが、なんともおかしな空気感で、会場はすっかり噺の中へ。プライドを保ちたい父親の屁理屈に、子どもの屈託ない言葉に、会場は笑いが止まりません。会社の部下、塾の講師まで巻き込んでの噺は、場面転換、展開もお見事。最後まで爆笑の連続でした。