2月14日(土)から2月23日(月・祝)の間、大阪国際文化芸術プロジェクト「大阪演劇祭2026」をHEP HALLにて開催しました。
「大阪演劇祭2026」は、“つながる”をテーマに開催し、劇団・観客・クリエイターが世代や立場を越えて交わり、新たな出会いと才能を育む場を創出しました。

「つながるPoint」として、ゲストオーディエンスが観客と一緒に客席で観劇するとともに、上演後のトークセッションにも参加し、演劇祭を盛り上げました。ゲストオーディエンスは日替わりで、粟根まことさん(劇団☆新感線)、板尾創路さん、加美幸伸さん、後藤ひろひとさん、サリngROCKさん(突劇金魚)、辻凪子さん、鳥越裕貴さん、福田転球さん、藤山扇治郎さん(松竹新喜劇)、山内圭哉さん、横山拓也さん(iaku代表)という顔ぶれ。連日貴重な意見や感想をいただくことができました。

演劇祭に参加したのは、全国から選りすぐりの劇団10団体。
國吉咲貴さんが主宰する演劇ユニット「くによし組」が上演したのは、『世話山さんの恋人』。世話好きな主人公・世話山さんの家に、ひょんなことから同僚の黒澤くんがやって来たことをきっかけに物語が動き出します。序盤はコントのようなテンポのよい会話劇と軽妙な掛け合いが続き、客席からは何度も笑い声が上がります。しかし物語が進むにつれ、世話山さんと黒澤くんが内側に抱えているコンプレックスや弱さを少しずつ打ち明け合い、舞台の空気は次第に変化していきます。誰もが抱えるデリケートな部分をおもしろく、しかし切なく描き出す展開。やがて迎える切ない結末に、観客は息を飲んでその行方を見守っていました。

くによし組
舞台装置は一切使わず、身体能力の高さとチームワークを武器に、笑いと想像力で作品をつくりあげていく「劇団イン・ノート」。宙吊りになった巨大コンテナを舞台にした『コンテナ・ワルツ』では、コンテナの中に忍び込んだ誘拐犯の男3人と人質の少女1人が、宙吊りになったコンテナの中で現状を打破しようと互いにバランスを取りながら悪戦苦闘するというものです。少しの衝撃で大きく揺れてしまう宙吊りのコンテナの中という不安定感を、役者の動きや音響、照明だけで表現。光の加減と俳優たちの熱演で、コンテナ内部だけでなく、外の世界まで想像を掻き立て、楽しませてくれました。

劇団イン・ノート
金哲義さんが、2022年に大韓民国の演劇祭へ参加したことを機に立ち上げた個人ユニット「team kulkri」。今回上演した『ホライズン・マーチ』は、実在の人物をモデルにした物語です。舞台は1930年代。故郷・済州島を離れ、仲間とともに希望を胸に大阪へ渡ったアン・ギパンを軸に描かれます。時代が戦火へと傾くなか、ギパンは「安田」と日本名を名乗り、貧しくも明るい日々を仲間たちと過ごしていました。しかし、そのもとにも召集令状が届きます。重いテーマを扱いながらも、随所にユーモアを織り交ぜ、作品は決して沈みきりません。希望を感じさせるエネルギッシュで清々しいラストは、上演時間45分とは思えないほど濃密な余韻を残します。さらに印象的なのが劇中の舞踊シーン。ケンガリやチン、チャングなど、韓国の伝統打楽器・管楽器が用いられ、物語に力強いリズムと鮮やかな彩りを添えていました。

team kulkri
2011年に近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻の学生らで旗揚げされた「匿名劇壇」が上演したのは『ラッシュアワード』。物語の舞台は駅のホーム。遅延の末にようやく到着する超満員の電車に乗れるのは、あと1人。ホームに居合わせた5人の乗客は、残り一枠の“乗車権”をめぐって大激論を繰り広げます。それぞれ立場が違う登場人物がロジカルな主張を繰り広げますが、物語が進行するうちにそれぞれの背景や考え方が浮き彫りになっていき、観ている側も次第に「自分だったらどうするだろう」「この中で誰を乗せるのが一番いいのだろう」と、どんどん物語の世界にのめり込んでいくようでした。

匿名劇壇
2020年に結成し、オンライン演劇で注目を集めた「ノーミーツ」が届けたのは、『オルタナティヴ・スケロク〜東京歌舞伎町輪舞曲〜』。歌舞伎十八番の代表的な演目「助六由縁江戸桜」を現代的にマッシュアップした作品で、きらびやかな歌舞伎町を舞台に、ホストのスケロク、恋人のホステス・アゲマキらが登場します。歌舞伎の世界観を踏まえつつ、現代の都市空間に置き換えた斬新な構成。歌舞伎調のセリフ回しと現代の語り口調が絶妙なバランスでミックスされた“オルタナティヴカブキ”は観客の心をつかみ、釘付けにしました。

ノーミーツ
静けさとリアルな会話で観客の記憶や過去の体験を呼び起こすことを持ち味とする「プロトテアトル」は、『飛んでM.I.C』を披露しました。舞台は四畳半のゴミ部屋。閉塞感のなかで生気を失い、鬱々とした日々をやり過ごすカップルが、偶然手に入れたマイクを通して喋りだすことから、互いの本音が露わになります。積もり積もった感情があふれ出し、ざらついた剥き出しの言葉が生々しく激しくぶつかり合い、濃密な二人芝居は観客を否応なくその世界へと引き込みました。男は終始、馬のマスク姿。表情を覆い隠すそのマスクは、シリアスな中にコミカルでもあり、感情の行方を観る者に委ねる装置の役割も果たしていました。

プロトテアトル
大阪市西成区・鶴見橋商店街にアトリエを構える「無名劇団」が披露したのは『笑いにまみれろ』。父の猛反対を押し切り、漫才師になることを決意したトシ。安アパートで暮らし、アルバイトで生計を立てながらお笑いライブに出演して夢を追い続けています。そんなある日、姉が父をライブに連れて行くと言い出して、物語はゆっくりと動き始めます。一度も笑ったことのない父を笑わせたいトシと、厳格ながらも息子を深く愛する父。ぶつかり合いながら心を通わせていく姿が、コミカルかつ少し切なく描かれました。劇中で披露された、トシのコンビ「シャカリキ本マグロ」の漫才も大きな見どころ。まるで本物のお笑いライブさながらの臨場感で、会場は拍手喝采に包まれました。

無名劇団
日常に潜むヘンテコなことや愛しい人間くささを、演劇・ダンス・コントで表現する「四畳半帝国」が届けた『捨てるほどでもない』は、同棲していたものの別れを選んだカップルの、引っ越し前夜を描きます。荷造り用の段ボールがあちこちに積まれて散らかった部屋の真ん中で、楽しかった旅の思い出を振り返ったり、どうでも良いようで良くない論争を繰り広げたりするふたり。日常の中に潜む非日常なひとコマを、感情を抑えた芝居で淡々と繰り広げていきます。別れるふたりのはずなのにそのやりとりは不思議と心地よく、会場全体がハートフルな空気に満たされました。

四畳半帝国
平均年齢16歳、最年少は7歳という若き世代のパフォーマーを中心に構成されるエンターテインメント集団「RE:MAKE」が上演したのは『ZERO』です。舞台は、今より少し先の未来の日本。政府はすべての児童・学生に、最新鋭のAIを搭載した人間型ロボット、いわゆるヒューマノイドを支給。学習や栄養、スケジュールの管理はもちろん、相談相手としても寄り添う存在です。しかし、そんな日常の裏で衝撃の事実が発覚します。ダンスや歌を織り交ぜたミュージカル的な構成で観客を惹き込みながら、進化を追い求めた先の未来で人間は何を求め、どう生きるかを鋭く問いかける本作。ステージを広く使った、若さあふれる躍動感たっぷりのパフォーマンスが観客を魅了しました。

RE:MAKE
スピードとパワーで押し切る、ナンセンスコメディを得意とする演劇団体「レティクル座」。上演したのは『バトルサウナー城崎』。サウナを愛する主人公・城崎は、20年前にサウナで行方不明になった父の影を追い、行きつけのサウナ施設の地下へ。そこに広がるのは、サウナの奥義を極めるための「バトルダンジョン」。仲間とともに最下層「ラストサウナ」に眠る秘宝を目指します。次々と立ちはだかるバトルは、まるでマンガやテレビゲームのような疾走感あふれる展開。手作り感満載の小道具も迫力十分で、笑いと驚きがノンストップで押し寄せる、痛快エンターテインメントに仕上がっていました。

レティクル座
それぞれの公演後、ロビーに設置していたパネルにお客様からの感想や団体へのメッセージなどがたくさん寄せられ、お客様の姿で大いに賑わいを見せました。

お客様が選ぶ『大阪演劇祭2026』No.1団体は、「RE:MAKE」に決定。お客様の投票は、演劇祭を盛り上げ、出演する劇団にも活気を与えました。熱狂の中、10日間に及んだ舞台は幕を閉じました。

