レポート

中村鴈治郎さん、中村壱太郎さんが映画『国宝』の李相日監督と『京鹿子娘道成寺』をテーマにクロストーク

開催日程:

2025年12月17日(水)

会場:

大阪松竹座

12月17日(水)、大阪松竹座にて「壽 初春歌舞伎特別公演開催記念 映画『国宝』と『京鹿子娘道成寺』」と題したトークイベントを開催しました。 大阪国際文化芸術プロジェクト「壽 初春歌舞伎特別公演」(2026年1月7日(水)開幕)に先立ち開催した本イベント。2025年6月に公開されるやいなや大きな反響を呼び、日本映画の歴代興行収入記録を塗り替えた映画『国宝』の世界と、その中でも象徴的に描かれた歌舞伎舞踊『京鹿子娘道成寺』の魅力を紹介する内容です。上方歌舞伎のホームグラウンドである大阪松竹座の舞台に、映画『国宝』の李相日監督、同作の歌舞伎指導を務めるとともに俳優としても出演した中村鴈治郎さん、日本舞踊・吾妻流七代目家元として所作指導を担当した中村壱太郎さんが登場。撮影の裏話や「壽 初春歌舞伎特別公演」の見どころについて語り合いました。

司会を務めたのは浅越ゴエさん(ザ・プラン9)。冒頭で「映画『国宝』をご覧になった方は?」と客席に問いかけると、ほとんどの手が挙がり、作品の人気ぶりがうかがえます。

第一部には、李監督、鴈治郎さん、壱太郎さんが登壇。鴈治郎さんは「李監督と一緒にこうして舞台に立つことになるとは思っていなかった」とコメント。壱太郎さんは「映画『国宝』の大ヒットとともにこのイベントを迎えられたことがうれしい」と述べ、「2026年1月に上演される『京鹿子娘道成寺』の世界も皆さまにご紹介していけたら」と意気込みました。作品の舞台の一つとなった大阪で、製作に深く関わった鴈治郎さん、壱太郎さんとともに大阪松竹座の舞台に立った李監督は、「このお二人のご協力がなければ、この映画(の完成)は叶わなかった」とキッパリ。客席からは大きな拍手が送られました。

この日はサプライズで吉村洋文大阪府知事と横山英幸大阪市長も登壇。舞台上に飾られた『京鹿子娘道成寺』の大道具を見て、吉村知事は「映画で見た光景を思い出しました。『国宝』は映画の素晴らしさ、歌舞伎の魅力を発信されたと思います」と感想を述べ、「映画で描かれた『二人道成寺』の元となる『京鹿子娘道成寺』を、ぜひ多くの皆さんに観ていただきたい」と2026年1月公演への期待を寄せます。横山市長も「大阪府市合わせて歌舞伎をはじめ上方文化の振興に全力で取り組んでいきたい」と決意を語りました。

また吉村知事からは、「ラストシーンで何を表現したかったのか」という質問も。これに対し李監督は、「彼(主人公)が見た景色は、たぶん誰にも映像化できない」と説明し、「我々が見せることができるのは、彼が何かを、彼だけの世界を見ているだろうってことだけ。そのための入り口を映像化した」と狙いを明かしました。

『京鹿子娘道成寺』についてのトークでは、鴈治郎さん、壱太郎さんがそれぞれ演目への思いを語ります。「(五代目中村翫雀)襲名の際に弟(中村扇雀さん)と『二人道成寺』をさせていただき、それこそ映画同様、2人で鐘に上がった」と振り返った鴈治郎さん。壱太郎さんは「赤から浅葱へと引き抜かれる衣裳の変化など、非常に華やかな舞台。女方舞踊のなかでも一、二を争う大曲の舞踊。上方歌舞伎の人間として、ここ大阪で勤めさせていただけることがとてもうれしい」と説明しました。

第二部の冒頭では、『国宝』の原作者・吉田修一さんからの手紙が司会の浅越ゴエさんによって代読されました。小説執筆のために鴈治郎さんの楽屋を訪ねた日々や、壱太郎さんの佇まいが喜久雄と俊介というキャラクターへの着想につながったことなど、作品誕生の背景が綴られた手紙に、李監督、鴈治郎さん、壱太郎さんが静かに耳を傾けます。 鴈治郎さんは「本人はいつも手紙で、絶対に現れないんですよ」と笑いながら、吉田さんの取材エピソードを披露。壱太郎さんも「今日を迎えるまでの『国宝』の道のりは約10年。感慨深いですね」と語ります。 一方、鴈治郎さんは「歌舞伎に携わる人間が、この映画を観てどう感じるのかが、実に気になるところでした」と率直な心境を吐露。「観たという人が増えてくれることがすごくうれしかった。賛否の否であっても、まず受け入れないと言えないわけですから」と語ります。物語の根幹にある「血筋と才能」については、壱太郎さんが「上方歌舞伎の人間は歌舞伎俳優全体の中ですごく割合が少ない。血だ、お弟子さんだ、養子だとかではなく、みんな一丸となっていくことが大切」とコメント。

さらに鴈治郎さんからは、吉田さんが当初、喜久雄と俊介のどちらを人間国宝にするか決めていなかったという秘話も。「もしかしたらどちらもありだった。そうなると結末も変わっていたかもしれない」との言葉に客席はどよめきます。また『国宝』に登場する『二人道成寺』について、李監督は「(喜久雄と俊介)2人の絆はただのきれいごとじゃなくて、いい時もあれば、恨みや嫉妬もある。いろんなものが絡み合う人生の紆余曲折を、この演目一つで描けると思った」と語っていました。終盤には、なんと李監督と鴈治郎さんが、映画のように釣鐘の上に上がるひと幕も!

締めくくりには、鴈治郎さんが「府市をあげて2026年1月の公演を応援してくださっている。お客さまが観にいらしてくださることによって、こういう公演を今後も続けられるのではないかと思うので、ぜひよろしくお願いいたします」と呼びかけます。壱太郎さんは「2026年1月は女方としてはありえないぐらい幸せな3演目に出演させていただきます。2026年5月で大阪松竹座は閉館してしまいますが、上方歌舞伎を大阪で未来につなげていきたい」と話しました。「壱太郎さんにどんな花子を見せていただけるのか、鴈治郎さんがどんな姿で立ち現れるのか、皆さん楽しみにしていてください」とは李監督。最後まで大いに盛り上がったトークイベントは、こうして幕を閉じました。

  • イベント名
    壽 初春歌舞伎特別公演開催記念 映画『国宝』と『京鹿子娘道成寺』
  • 開催日

    2025年12月17日(水)

  • 会場

    大阪松竹座

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