演劇公演「大阪で創る3つのストーリー」が2月9日(木)から26日(日)の間、ABCホール、COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールの2会場で開催されています。大阪を拠点に活躍している劇作家、演出家、俳優たちが、3つのオリジナル長編作品を公演するこのプログラム。ABCホールでは、2月9日(木)から2月12日(日)までゲキゲキ/劇団『劇団』の「ベリーベリーハッピー」が全5公演行われました。
大阪を拠点に活動しているゲキゲキ/劇団「劇団」。今回の「ベリーベリーハッピー」は作・小西透太、演出・古川剛充による書き下ろしの新作。大阪の小劇場で活躍する俳優をメインに多数のキャストが出演します。
ストーリーは、とある過去の出来事から、自分より他人の幸せを優先してしまう男・祐二が、家出中の女子高生・詩衿と出会い、取り壊し直前のアパートに住む風変わりな住人たちとともに、新たな生きる意味を見つけていく…というもの。舞台上には祐二の住むボロアパート「ハッピーメゾン」とその裏にある公園が。ここで、祐二と家出中の詩衿、そして祐二と同じアパートに暮らす、漫画家、弁護士志望、元ミュージシャンなど、さまざまな経歴を持つ住民たちを巻き込んでのストーリーが展開していきます。
凍てつく冬の夜、公園で詩衿を見つけ、声をかける祐二。最初はつっけんどんな態度を取っていた詩衿ですが、住民たちの暖かく柔らかなつながりを見るうちに、自身の抱える複雑な事情を明かすなど、少しずつ心を開いていきます。そして自分もこのハッピーメゾンにいたいと意思表示。歓迎してくれる住民たちとの、和やかな時間が過ぎていきます。しかし、とあることから、住民たちそれぞれの抱える心の影が顕になるとともに、困っている人のために行動できる美しい心の持ち主だと思われている祐二も、その行動の理由、消せない過去の秘密が明かされていきます。
罪滅ぼしと恩返しの間で思い悩む祐二が心の底からの思いでとった行動が、各自を一歩踏み出させるきっかけになるなど、後半にかけてストーリーは急展開。それぞれの生き方が絡み合い、明るい未来を感じさせてくれるベリーベリーハッピーな結末に、ラストには会場が大きな拍手に包まれました。
3ヶ月の出来事を描いたこの作品。個性的な登場人物たちが生き生きと描写されていることに加え、軽妙なセリフのやりとりで笑わせたかと思うと、シリアスなシーンでは一転ぐっと観客を引き込むなど、緩急自在の演出も印象的でした。