2月9日(木)から演劇公演「大阪で創る3つのストーリー」が行われています。2月16日(木)から2月19日(日)には、ABCホールで金哲義作・演出「沙也可〜海峡を越えた愛〜」が上演されました。
大阪を中心に活動している劇作家、演出家、俳優といった演劇関係者が3つのオリジナル公演を開催するこのプログラム。2つめの作品となる「沙也可〜海峡を越えた愛〜」は、週刊漫画サンデーで連載されていた人気漫画「沙也可」を舞台化したものです。大阪出身の金哲義が作・演出を担当。文禄・慶長の役を舞台に交錯する人々の生き様を“命を繋ぐ”をテーマに描いた愛と冒険活劇です。
芝居が始まるとすぐ、そのスケールの大きさ、目まぐるしく展開するシーンに引き込まれていきます。雑賀衆を率いる雑賀孫六は朝鮮出兵に反対ながら、一族再興のため戦に参加することに。船旅の途中、そして上陸してからも飢えや乾きなどで苦しめられます。そうするうち、孫六たちは朝鮮人たちの村に足を踏み入れます。そこで出会った人たちとぶつかりあいながらも少しずつ絆を深めていく孫六、そして仲間たち。運命のいたずらから、この村を守るために日本軍と戦うことになります。それぞれの思いを抱えて戦いに挑み、九死に一生を得ますが、ストーリーはそこからまた二転三転していきます。
時間も場所も自由に超えていく、舞台の大きさを忘れさせる演出は圧巻。孫六を始め、登場人物それぞれのキャラクターがしっかりと描かれていること、さらに力の入った役者たちの演技も、舞台により一層の熱を加えていました。
戦を行う意味、故郷を思う気持ち、それぞれの立場、生き方の違いが描き出されることで、アイデンティティの拠りどころについても深く考えさせられた同作。シリアスなストーリーの反面、笑えるシーンがあちこちに織り込まれていたことも見どころのひとつでした。ユニークな言葉のやりとりのほか、インパクトのある体を使ったボケでも笑わせます。上演後にはキャスト全員が挨拶し、会場は大きな拍手に包まれました。