レポート

大阪府立江之子島文化芸術創造センターで、万博の過去と現代を感じる美術展

開催日程:

2022年11月5日(土)~19日(土)※月曜日は休館日

会場:

大阪府立江之子島文化芸術創造センター ルーム1(4階)・ルーム4(1階)

11月5日(土)より2週間、大阪府立江之子島文化芸術創造センターで『1970:2025過去と現代の対話展』が開催されました。1970年大阪万博当時に制作されて大阪府が所蔵する選りすぐりの作品と、10月29日(土)・30日(日)開催の『EXPO PARK ART & MUSIC WEEKEND』で制作されたライブペイント作品を展示。万博にちなんだ過去と現代の美術展とあって、来たる大阪・関西万博に期待や関心を寄せる幅広い世代の方々が足を運びました。

会場となった大阪府立江之子島文化芸術創造センター(enoco)は、2012年4月にアートやデザインなどの創造力で大阪を元気にすることを目指して開館した施設です。『1970:2025過去と現代の対話展』では1階のルーム4と4階のルーム1を活用し、大阪にゆかりある作者たちの過去と現代の美術作品を通じて、時代ごとに異なる大阪の人や街、文化の魅力を伝えることを目指しました。

ルーム4では「大阪府20世紀美術コレクション展」と題し、大阪府が所蔵する現代美術を代表する作品群から選りすぐった、上前智祐、金光松美、嶋本昭三、須田剋太、津高和一という作家たちの代表する美術作品を展示。

5人の作家たちの共通点といえば、いずれも大阪にゆかりがあり、関西の美術が盛り上がっていた大阪万博(1970)当時に名を轟かせたトップアーティストであること。

彼らが活躍した1950年〜1970年代は、戦後復興期から高度成長期を迎えた頃で、大阪の街にはバイタリティが溢れ、関西の芸術もエネルギーに満ち満ちていました。嶋本、上前両氏といえば、当時、関西を拠点とした前衛芸術運動「具体」のメンバーとして、須田は強い生命力を感じさせる独自の作風、津高は日本を代表する抽象画家、金光は海外で活躍して日本の抽象表現主義とを繋げるなど、いずれも現代アートの原点を担った作家として知られています。

エントランスを抜けると、まず目に飛び込んでくるのが須田剋太の作品です。本展では須田剋太が40歳を過ぎてから傾倒した抽象絵画を中心に展示していました。力強く、奔放なタッチによる生命力のある表現が異彩を放ちます。

続いての展示は、津高和一の作品。万博が開催された1970年頃の津高和一は、抽象画に加えて、土や石によるオブジェも手がけていました。自己内部にわき上がるイメージをオートマティックに画面に定着させようと試み、簡潔な形を線やにじみのある色で表現しています。叙情性に溢れた作品はいずれも観る人の心象風景に寄り添うように感じられます。

金光松美の作品からは選りすぐりの3点を展示。日本とアメリカ、二つのアイデンティティを持ち、両国の美術をつないだ作家として知られる金光らしさが滲む抽象画です。

1970年3月15日から9月13日まで、万国博みどり館にて開催された具体グループ展示に出品された上前智祐の作品を本展でも展示。52年の時を経ても色褪せない、当時のエネルギーを感じさせる作品の数々が堪能できました。

70年大阪万博に深く携わったアーティストである嶋本昭三の作品で、ルーム4の企画展は締めくくられます。嶋本昭三といえば、熱い身体運動そのものを制作手段として画面に定着させる手法が特徴で、固定概念にとらわれない自由な発想で制作される作品の数々はまさに「行動の軌跡」そのもの。関西の前衛美術グループ「具体」の精神も如実に表す作品群です。

4階のルーム1は一転、広い空間に忽然と浮かび上がるかのように6つの作品がダイナミックに展示されていました。いずれも10月29日、30日に実施された『EXPO PARK ART & MUSIC WEEKEND』で制作されたライブペイント作品です。それぞれ大阪にゆかりある個性豊かな6組の作家たち、BAKIBAKI(DOPPEL)、Hideyuki Katsumata、kuua、LANP、Mon Koutaro Ooyama(DOPPEL)、NAZEの手によって、「70年代遺産と現代のエネルギー」をテーマに生み出されました。

同じテーマでも、Hideyuki Katsumataは「愛」を読み取り、Mon Koutaro Ooyamaは「Others(他者)」を感じ取って作品に込めました。作者の感性や作風、得意とする手法によって、実に様々な表現が生み出されることを感じながら、過去から現代へ、人にもアートにも街にも、脈々とエネルギーが受け継がれていることを感じさせます。

2025年大阪・関西万博への機運も大いに感じられる素晴らしい作品展となりました。

  • イベント名
    1970:2025 過去と現代の対話展
  • 開催日

    2022年11月5日(土)~19日(土)※月曜日は休館日

  • 会場

    大阪府立江之子島文化芸術創造センター ルーム1(4階)・ルーム4(1階)

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