10月21日(金)、22日(土)、COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにおいて「Rhizomatiks × ELEVENPLAY × Kyle McDonald “discrete figures 2022version”」を開催しました。最先端テクノロジーを駆使したメディア芸術分野のプログラムとして、大阪芸術大学アートサイエンス学科が主催、大阪府、大阪市、大阪文化芸術創出事業実行委員会との共催により実施しました。
「discrete figures 2022version」は真鍋大度さん、石橋素さんが率いるRhizomatiks、演出振付家のMIKIKOさんが主宰するダンスカンパニー・ELEVENPLAY、そしてアーティストのカイル・マクドナルドさんによるダンス作品。2018年が初演の「discrete figures」は、ニューヨークやバルセロナなど、世界7カ国10都市をめぐるワールド・ツアーを行い、各地で観客を魅了してきた名作。大阪での公演に期待が高まります。
会場となったWWホールでは、エントランスでTシャツやパーカー、タンブラーなどのグッズも販売。多くの観客がお気に入りのアイテムを買い求めていました。そしていよいよ公演がスタート。事前情報として「AI、機械学習を駆使して<数学的><集合知的>視点からムーブメントを創出」、「舞台上でバーチャルとリアルが交差する圧倒的ダンスパフォーマンス」と公開されたとおり、これまでに体験したことのない圧倒的なパフォーマンスが繰り広げられます。5人の女性ダンサーの動きと音、光、そして影が完全にシンクロし、ステージ上に新たな世界が作り出されると、ダンサーの体より少し大きなサイズの半透明のスクリーンを取り付けたフレームが登場。そのフレームの前後で踊るダンサーの姿に映像が重なっていきます。ステージ上にカメラが登場すると、観客が実際に見ているパフォーマンスがスクリーン上に映し出されますが、そこには現実の世界にはいないダンサーの姿が。目で見えている実体と映像の中の世界、バーチャルとリアルの境界があいまいになっていきます。
ステージ上でダンサーとともに踊る影、スクリーンにはその影の本体が映し出されるなど、様々な形で変化するステージから目が離せません。リアルなダンスと映像のシンクロは加速し、ダンサーたちの熱気の余韻が可視化されたような映像が展開していきます。さらに意志を持っているかのように舞うマイクロドローンとダンサーのコラボレーションなど、舞台に引き込まれているうち、公演はあっという間に終了。およそ1時間、圧巻のパフォーマンスが幕を下ろしました。終演後、会場からの鳴り止まない拍手にダンサー、スタッフたちは笑顔で応えていました。
初日公演の終了後には、真鍋大度さん、MIKIKOさん、石橋素さんによるポストパフォーマンストークも行われました。3人がステージに姿を見せると、会場は大きな拍手に包まれます。担当したパートについて真鍋さんは、制作では音楽周りのディレクションとコンセプトなどと話し「本番中にはやることがたくさんあるので、今ちょっとホッとしています」と安堵の表情。それを受けて「本番中は寿命が縮んでるだけ」と笑わせたMIKIKOさんは、振り付け、そしてテーマを受けての演出や構成などを担当しているとのこと。石橋さんは技術的な部分、ステージで大いに活躍したフレームなどのハードウェア、そしてソフトウェアも含めたスタッフを取りまとめるテクニカルディレクションという立場、と話しました。
今回のコンセプトについて、真鍋さんは、自身が手にした数学の文献に触れ、シンプルなものから少しずつ複雑化、抽象化していく様子に興味を持った、それを作品で伝えられればと思ったと明かします。そして、最新テクノロジーについても言及。プリミティブなところから現代的な数学、身体までまんべんなく使う作品であることをアピールしました。
MIKIKOさんは、「この難しいお題をどうやったら説明なく作品の中で共有できるかと思った」と話すと、点から線、図形になっていく進化の形を11の曲で辿っていくということをやりたかったと述懐。曲作りに関しては、映像の進化に対してどうあるべきかと考えて作成したとのこと。石橋さんからはカメラが舞台上にあり、ほぼ全編モーションキャプチャを使っていることなど、技術的なことについて語りました。
今回の大阪公演について真鍋さんは、こういう機会があって良かったと話すと、会場がすごく整備されており良い状態と評価。MIKIKOさんも、音と音の立体感が感じられる劇場だったと話すと、東京以外で公演できるのはすごく貴重なのでみんな気合をいれてやってきたと明かし、会場が興奮に包まれる中、公演は終了しました。