大阪の文化芸術活動の活性化を図る「大阪文化芸術創出事業」のスタートを飾る「歌舞伎特別公演」を実施するにあたり、8月1日(月)に大阪市役所で記者発表会を行いました。記者発表会には吉村洋文大阪府知事、松井一郎大阪市長のほか、公演に出演する中村鴈治郎さん、片岡愛之助さん、中村壱太郎さんが出席。事業の意義などを語りました。
今回の公演は9月8日(木)から11日(日)の4日間、大阪松竹座で開催。上方にゆかりのある役者たちが、義太夫の名作「傾城反魂香」や男女の踊り比べが見どころの「男女道成寺」のほか、「神霊矢口渡」「博奕十王」「夏祭浪花鑑」といった演目に出演します。チケットの発売は8月5日(金)から。
この事業の主催者である吉村知事は「文化芸術活動は人の心を豊かにしていくもの、大阪府市として応援していきたい」とアピール。本公演が文化芸術創出事業の第一弾であることを改めて伝え、上方歌舞伎の役者、江戸歌舞伎の役者が共演する非常に豪華な公演なので、多くの人に来てほしいと力を込めました。
同じく主催者の松井市長は「大阪松竹座がある道頓堀川周辺は、かつて、「なにわのブロードウェイ」とも呼ばれた劇場街として栄え、実に数多くの名優、名舞台を世に送り出してきたところ。そんな地で、「歌舞伎特別公演」を開催することは、大阪が元気になるきっかけとして最高の公演と思うし、ぜひ多くの皆さんに、観て、楽しんでいただきたい。」と話します。さらに2025年には万博が控えており、国内外から大阪の文化を楽しんでもらえる、そんな街・大阪を目指していくと話しました。
続いて松竹株式会社執行役員の市村氏が演目の説明を行うとともに、「上方にゆかりのある方々に出演していただくので、一人でも多くの人に公演の宣伝をお願いしたい、満員御礼となることを願っている」と話しました。
この後、公演の見どころについて役者たちが語りました。鴈治郎さんは、自身が出演する演目について言及。「傾城反魂香」では市川猿之助さんとの夫婦役が楽しみであること、そして「神霊矢口渡」について、「大阪の松竹座なのでベタッとした頓兵衛ができればと思う」と話しました。
愛之助さんは「男女道成寺」について、「いつもの道成寺とは違った部分のあるところがやりがいがあり、おもしろい」と話し、久しぶりとなる女形への意気込みを見せました。
壱太郎さんは今回の公演について、「男女道成寺」での愛之助さんとの息の合った踊りを見てほしいと話し、「夏祭浪花鑑」では10年分の思いを役に詰め込みたい、と熱く語ります。「神霊矢口渡」については、「いつか必ず関西に持ってきたいと思っていた」と明かしました。
さらに、市川猿之助さんからビデオメッセージが届き、「久しぶりに大阪で芝居できることを喜んでいる。1人でも多くの人にご覧いただきたい」と笑顔で語りました。
一方、コロナ禍の歌舞伎界を3人が振り返ります。鴈治郎さんはコロナが蔓延し始めたころ、公演できないという状況に初めて遭遇し、半年以上舞台に立てないなかで「歌舞伎やエンターテインメントが本当に必要なのかについて散々考えさせられた」と言います。
最終的に「エンターテインメントは人間が生きるうえで絶対に必要なものである」と確信したとのことで、今回の公演も「こんなにうれしいことはない」とコメントしていました。また、「毎年続けられるよう、万博に向けて大阪が誇る芸術として発信していく。そのきっかけになれば」と思いを込めました。
愛之助さんも、コロナ禍で休止していた舞台が復活したときのことに言及。「本当にやってもいいのか」と悩んだそうですが、幕が開いたときの客席からの拍手の大きさに感動し、あやうく泣きそうになったことを明かします。そして、「4日間、精一杯務めさせていただきたい。万博に向けての助走として、今後も続けていただければありがたい」と締めくくりました。
壱太郎さんは「神霊矢口渡」で猿之助さんから指導を受けることに触れ、もう一度、しっかり習って芸を伝承するということも見せていきたいと話しました。