会場の大槻能楽堂は昭和10年に創建され、大阪の能楽界と上方文化の発展に寄与してきました。平成26年に登録有形文化財(建造物)として登録、令和元年からの改修工事で座席、照明、空調などの設備が一新され、能楽だけでなく、多目的に使用できる施設になりました。
公演にあたっては、新型コロナウイルス感染防止のため、座席の消毒、お客様の検温と手指のアルコール消毒、コロナ追跡シートの記入を徹底したほか、開演直前まで非常口を開放し、換気を行いました。また、座席は一席ずつ間隔を空けての使用としました。
第一部ではまず、狂言「梟(ふくろう)」(大蔵流)が上演され、善竹隆司が法師を演じました。
続いて上演されたのが、源氏物語を題材にした能の人気曲「葵上(あおいのうえ)古式」(観世流)。六条御息所の生霊を人間国宝で文化功労者の大槻文藏が、横川小聖を文化功労者の福王茂十郎がそれぞれ勤めました。
第二部では、2020年に新型コロナウイルス終息祈願をこめて作られた新作能「アマビエ」が上演されました。武富康之が病魔退散の妖怪「アマビエ」を演じました。
続いて、能の人気曲「土蜘蛛(つちぐも)」(観世流)が上演されました。前シテ怪僧、後シテ土蜘蛛の精魂を大槻裕一が勤めました。千筋の糸を放つ土蜘蛛と独武者たちの激しい攻防に会場は大いに盛り上がり、盛況のうちに幕を閉じました。