大阪芸術文化FES

2017年10月1日(日)- 10月31日(火)

大阪府・ヴァルドワーズ県友好交流30周年記念コンサート

大阪府・ヴァルドワーズ県友好交流30周年記念コンサート 大阪府・ヴァルドワーズ県友好交流30周年記念コンサート

大阪府・ヴァルドワーズ県友好交流30周年記念コンサート

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開催日 10月31日(火)
開催時間 開場 18:30 開演 19:00
会場 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
レポート

10月の1カ月間で、大阪府一円で音楽や上方伝統芸能、上方演芸、アートイベントなど、さまざまなジャンルのプログラムを展開した『大阪文化芸術フェス2017』。ラストとなった10月31日(火)、あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホールで『大阪府・ヴァルドワーズ友好交流30周年記念コンサート』が開催されました。パリの北西約30kmに位置し、イル・ド・フランスと呼ばれるフランスの首都圏に属するヴァルドワーズ県。大阪府は1987年にヴァルドワーズ県と友好交流に関する覚書を交換し、以来、学術や経済、文化などさまざまな分野で積極的な交流事業を行ってきました。
今回、『大阪文化芸術フェス2017』では、その交流30周年を記念して、同県の県庁所在地にあるセルジー・ポントワーズ地域圏立音楽院で声楽科教授を務めるバリトンのジャン=フランソワ・ルーションさん、そして、同じくピアノ科教授のオノレ・ベジャンさんを迎え、フランス、ドイツの歌曲によるコンサートを開催しました。

まず、大阪府知事からご挨拶がありました。「今回、このコンサートに際しまして、今日、ヴァルドワーズ県からジャン=フランソワ・ルーションさん、オノレ・ベジャンさんという、才能にあふれるふたりの音楽家をご招待いたしました。実のところ、私もこういうコンサートは初めてなんですけれども、このおふたりの歌声を皆さんと一緒に楽しませていただきたいと思います」と、知事も楽しみにしていたようです。

大きな拍手に迎えられ、ジャン=フランソワ・ルーションさんとオノレ・ベジャンさんがステージに。コンサートの幕開けにふさわしく、“歌曲の王”とも呼ばれるフランツ・シューベルトの『ドナウ川の上で』、『小人』、『水の上で歌う、『漁師の娘』をお披露目。ジャン=フランソワ・ルーションさんの、身体の芯まで響くようなバリトンと、オノレ・ベジャンさんによる軽快なピアノ演奏で聴衆を一気にふたりの世界へと引き込みます。続いてオノレさんのピアノソロ。シューベルト『即興曲 作品番号90−2』の流れるような心地いい旋律にうっとりと耳を傾けるオーディエンス。

続いて、ドイツ歌曲の代表的作曲家であるフーゴ・ヴォルフの『郷愁』、『めぐりあい』、『隠棲』、『別れ』。ヴォルフの持ち味である孤高の響きを湛えた楽曲は、しんしんと心にしみ込むようなピアノ演奏と胸に迫るような歌声が会場に響き渡ります。

近代ドイツが生んだ作曲家、リヒャルト・シュトラウスからは『静かな森のほとりで 「4つの情緒ある風景」より』を。20世紀フランスのモダンで優美な作品を生み出した作曲家、ガブリエル・フォーレからは『幻想の水平線 op.118』、『ノクターン第4番 op.36』を披露しました。

続いては、ジャン=フランソワ・ルーションさんたちの友人でもあるという、現在も活躍中のフランスの作曲家、ギー・サクルの『光と影』と『あたらしいこどもの歌』。また、バレエ音楽の名曲『ボレロ』で知られるモーリス・ラヴェルからは歌曲集『博物誌』と『ハイドンの名によるメヌエット』も披露され、その美しく心地いい調べにお客さんから割れんばかりの拍手が贈られました。

いよいよコンサートも終盤。20世紀前半にフランスで活躍した作曲家の集団「フランス6人組」のひとり、フランシス・プーランクの『三つの無窮動』、『即興曲第15番『エディットピアフを讃えて』、『ギヨーム・アポリネールによる四つの詩』を情熱的に歌い上げ、会場を包みました。演奏後は、才能あふれるふたりに感動と感謝を伝えるかのように何度も万雷の拍手が巻き起こり、そのたびステージに上がり、オーディエンスの拍手に応えるジャン=フランソワ・ルーションさんとオノレ・ベジャンさん。
アンコールは、ガブリエル・フォーレの『マンドリン』と、モーリス・ラヴェルの『酒の歌(ドゥルシネア姫に心を寄せるドン・キホーテより)』でした。演奏の最中、ステージの後ろの白壁が上がり、梅田の夜景が窓一面に。アーバンな景色を背景にふたりが歌い奏でるステージは、これまでにない別世界を生み出していました。

最後にジャン=フランソワ・ルーションさんからご挨拶がありました。「今日選んだ曲は主に室内楽曲です。本来だと、もう少し小さな家や小さな部屋でするもので、演奏家とオーディエンスの皆さんが近くで聴ける音楽になります」とのこと。また、「私たちはフランスのセルジー・ポントワーズ地域圏立音楽院で教鞭を取っていますが、そこには日本からも多くの才能あふれる留学生の皆さんに来ていただいています。今後、将来にかけてもこうした皆様が日本から留学されることを非常に期待していますし、私たちも光栄に思っています」と日本の音楽家の卵たちの才能にも期待していると語りました。

さらに「本日はこの機会に、今日のプログラムの中の作曲者のひとりであるギー・サクルをご紹介したいと思います」とジャンさん。「サクル氏は、私たちの非常によい友人でもあり、今も作曲家として活動を続けておられます。彼の偉大な仕事としては、作曲活動とともに執筆活動もされており、3000ページにも及ぶピアノ楽曲の本を書いておられます」と紹介しました。

最後に「本日は、皆様にはあまり馴染みのない曲も紹介させていただきました。また、最後になりますがこういった機会を与えてくださりありがとうございました」との感謝の言葉で締めくくりました。
フランス声楽界の層の厚さに触れられる、貴重なコンサートとなりました。

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