大阪芸術文化FES

2017年10月1日(日)- 10月31日(火)

英語寄席「KOTENGLISH!!」

英語寄席「KOTENGLISH!!」 英語寄席「KOTENGLISH!!」

英語寄席「KOTENGLISH!!」

英語寄席「KOTENGLISH!!」 英語寄席「KOTENGLISH!!」 英語寄席「KOTENGLISH!!」

開催日 10月28日(土)
開催時間 開場 14:00 開演 15:00
会場 大槻能楽堂
レポート

日本の古典芸能を世界へ!
英語で楽しむ寄席“KOTENGLISH”で落語家・桂かい枝と浪曲師・春野恵子が大熱演

2017年10月の1ヶ月間、大阪府下の様々な会場でイベントが行われている大阪文化芸術フェス2017。上方伝統芸能や演芸、音楽、アートなど、魅力いっぱいのプログラムが連日多くの観客を集めています。10月28日(土)、大阪市中央区の大槻能楽堂の能舞台で、上方落語と浪曲を英語で上演するユニークな寄席公演『英語寄席 KOTENGLISH!!』が開催されました。

英語落語の第一人者・桂かい枝と、英語で世界に浪曲を広めようと活躍する浪曲師・春野恵子さんがタッグを組み、“古典”と“英語”を融合させる『KOTENGLISH(コテングリッシュ)』。この日はあいにく雨でしたが、会場にはたくさんの観客が詰めかけ、外国の方や小さなお子さんの姿も見られました。

公演は、かい枝と春野さんのトークからスタート。「Good Afternoon everyone!」と元気よく英語でご挨拶したかい枝ですが、客席に並ぶジャパニーズに「あれ、大丈夫ですか?日本語の方がいいですか?」とすぐさま問いかけて笑いを誘います。そんななごやかな雰囲気で始まったトークでは、日本の古典を英語で演じる2人の苦労が明かされました。春野さんは、浪曲の独特の節回しに英語をのせる難しさに言及。「浪曲は節を伸ばして歌い上げるのが特徴ですが、たとえば“book”という単語を“ブ~ック”と歌ったのではアクセントも変わるので意味が通じなくなる」そうで、節に合う英単語に置き換えるのに苦労するとか。一方、かい枝は、日本語では自分のことを指す言葉にその人の職業や立場までも表すさまざまなパターンがあるのに対し、英語にはひとつしかないことを指摘。「“拙者”なら武士、“手前”なら商人とわかってもらえますが、英語だと“I”だけ。なので登場人物をあまりたくさん出すと混乱してしまう」とひとりで何人ものキャラクターを演じ分ける落語を、英語で表現する難しさを語りました。

とはいえ、この20年間で世界24カ国を訪れ、英語落語の公演を行ってきたかい枝は「海外のお客さんは大いに笑ってくれるしノリがいい。エンタテイメントとして落語を楽しんでくれる」と海外での反応のよさに手応えを感じているよう。これまでに海外8カ国で英語浪曲を披露してきた春野さんも「イタリアのローマで公演をしたとき、『浪曲はオペラに似てる』と現地の方からうれしいお墨付きをいただきました」とニッコリ。「大阪は多くのエンタテインメントがある街。これからもどんどん大阪から世界にエンタテインメントを発信していきたい」というかい枝の言葉に大きくうなずいていました。

そして、いよいよ英語で聞かせる伝統芸能の上演へ。「待ってました!」という客席からの掛け声で登場した春野さんは、英語浪曲『番町皿屋敷〜お菊と播磨』を披露しました。歌舞伎や講談、落語などさまざまな古典芸能の題材にもなっている『播州皿屋敷』は、幽霊のお菊さんが「いちま〜い、にま〜い」と恨めしげに皿を数える怪談として広く知られていますが、『番町』は青年旗本・播磨と腰元・お菊の悲恋物語。播磨の愛を確かめるため、家宝の皿を割ってしまったお菊の悲しい女心と、そんなお菊を許せず、ついには命を奪ってしまう播磨の壮絶な恋の結末が綴られます。「Several centuries ago」と物語の時代設定を説明するフレーズから始まった英語バージョンでは、お菊と播磨の緊迫したやりとりを、声色や表情を自在に変えながら迫力たっぷりに演じる春野さんの大熱演に大きな喝采が起こっていました。

一方、かい枝は、冒頭の“枕”で英語と日本語を交えながら、落語の楽しみ方をわかりやすく指南。曰く、ひとりが何人もの登場人物を演じ、扇子と手ぬぐいであらゆるものを表現する落語は「聞く人のimagination(想像力)が大事」とのこと。家を訪ねるときの「こんちわー!」という挨拶の声の大きさで「家の大きさも表現している」と話し、大豪邸の玄関先で奥にいる家の主に声を届けようと大声を張り上げる様子を実演したり、うどんを食べる様を扇子一本で演じきる落語独特の表現を熱演してみせるなど、ユーモアたっぷりの解説に客席は大盛り上がりです。続いて披露した英語落語の演目は『動物園』。動物の皮を着て檻の入り、なぜか虎を演じることになった男が主人公の滑稽話は、「one two three…」と虎の前足の動きを必死に練習する様子など爆笑シーンの連続!見事な英訳もさることながら、言葉を超えた落語の表現力で会場を沸かせました。

中入り後は、春野さんが大坂を舞台にした古典の演目『樽屋おせん』を日本語で上演。併せて、「浪曲を次世代に繋げたい」と春野さんが取り組んでいる新作浪曲や、洋楽のヒット曲などにのせて浪曲を語る“ロック浪曲”など新しい試みも披露され、伝統を守りつつも時代に合わせた進化を遂げながら未来へと受け継がれる古典芸能のパワーを見せつけました。

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